2017年02月16日

50万ボルト高圧送電線の架空地線交換 地上100mの水平ケーブル1本が頼り

写真の上のカーソルがの場合はクリックすると拡大します。
クリックすると拡大
クリックすると拡大高圧送電線の一番上の細いケーブルに人がぶら下っているのが判ってもらえるでしょうか。写真をクリックしてもらうと右の写真の人がぶら下っている場所が特定できると思います。
ここの鉄塔と次の鉄塔のスパンは517mです。
この高圧送電線は、房総変電所と新京葉変電所を結んでいる房総線と呼ばれている50万ボルト送電線です。ここの鉄塔の高さは87mです。隣の鉄塔が高さ106mで、その隣の鉄塔が高さ121mです。さらにその隣の鉄塔は107mの高さです。上の写真は2017年1月31日に撮ったものです。今回の送電線を単に高圧送電線と記載いたしましたが、電圧が50万ボルト(500KV)であることから超超高圧送電線に分類されます。
 超超高圧線 500KV
 超高圧線  200~275KV
 特別高圧線 154~187KV 110~66KV 33~22KV 22KV
 高圧線   6.6 ~3.3KV (配電系統)
 低圧線   200~100V (家庭用)
 
この房総線では送電線の取替工事が行われています。2017年2月初めの時点で鉄塔の左側の送電線と一番上の細い線の取替工事が完了いたしました。右側の送電線の取替工事は2月13日から始まりました。送電線は右側と左側の2系統で構成されています。片側が使われている時は反対側は予備系統として事故/災害/故障に備えているのです。送電線は交流三相なので3段の送電線になっています。一番上の細い1本の線は架空地線(かくうちせん)と呼ばれて、下の3段の送電線を雷から守っています。送電線の取替工事に関しては2016年12月16日のタイトル「みのむし軍団 高圧送電線補修のプロフェッショナル」の記事で紹介いたしました。
クリックすると拡大その時、送電線にぶら下っている写真も紹介しましたが50万ボルト(500KV)送電線の場合は右の写真のように4本構成されており安定している上に4本のケーブルであることから安心感もありました。今回の場合は細い1本で高さも約100mと最も高いことから紹介させていただくことにいたしました。
クリックすると拡大

下の写真は鉄塔の最頂部で作業をしている光景です。
見た範囲で細い1本のケーブルに人がぶら下る機会は2回でした。下記の①~⑦の手順の中で②と⑦の時に人がケーブルにぶら下りました。すべて見ているわけではないので最低2回と理解願います。
 ①滑車を取り付ける。
 ガイドの赤いロープ(ケーブル)を鉄塔間に渡す。
 ③赤いロープを鉄塔に固定する。
 ④架空地線を1本につないで赤いロープをガイドに取り換える。
 ⑤新しい架空地線を鉄塔に固定する。
 ⑥赤いガイドロープを外す。
 架空地線に突起物を取り付ける。
クリックすると拡大

鉄塔との接続部分の下からの写真です。
クリックすると拡大

こちらがガイド用の赤いロープを鉄塔から鉄塔に渡す作業です。
クリックすると拡大

鉄塔からかなり離れました。ガイドのついた赤いロープーを伸ばしていきます。こちらの写真はクリックすると特別に大きく拡大いたします。クリックすると迫力があると思います。人と鉄塔の間にガイドが一つ取り付けられていることが分かってもらえると思います。
クリックすると拡大

真下からの写真です。
クリックすると拡大

ガイドが2つ取り付けられた写真です。
クリックすると拡大

上のオリジナルの写真から切り取った写真です。赤いガイドロープを引っ張りながら進んで、鉄塔間に赤いロープを渡している雰囲気を伝えたくて、この拡大写真を掲載いたしました。上の写真をクリックするとこちらの写真を表示するように設定しています。
クリックすると拡大

赤いガイドロープが張られた写真です。
クリックすると拡大

隣の鉄塔の写真です。こちらの鉄塔の高さは106mです。すでに紹介した通り、その隣の鉄塔の高さは121mです。ここの鉄塔は送電線をV型に碍子で吊り下げるタイプです。冒頭の鉄塔は送電線の固定点で碍子で水平に引っ張るタイプの鉄塔です。
すでに左側にはガイドの赤いロープが張られています。
クリックすると拡大

同じ写真ですが頂部を拡大しました。すでに架空地線は滑車に通されています。いつでも取り換えられる体制です。架空地線は右に引っ張って交換されました。鉄塔間の古い架空地線をつなぎ、さらに新しい架空地線をつないで一気に交換するのだと思います。動きまでは写真では分からないのですが、交換中の写真かもしれませ。この時は三脚を持っていなくて動画は撮らなくて写真だけでしたが、ブレがあっても動画を撮っておけばよかったと後悔しています。
クリックすると拡大

架空地線の交換が終わるとの架空地線に突起物を取り付ける作業です。冒頭の写真です。鉄塔の高さは87mですが、鉄塔が高いところに建っていることから実質的には100m以上の高さになります。
100mの高さに長さ513mのケーブルにぶら下って人力で移動すると考えていただくと、この作業の凄さを実感していただけるのではないかと思います。
クリックすると拡大

突起物取り付け作業を動画で紹介します。作業をしながら移動していきます。取り付けではなくペンチで捩じると突起物がケーブルから出るように見えます。


87m下の地上からの写真です。架空地線はグラウンドワイヤ (Ground Wire)とも言われます。業界では略してGWと呼ばれているそうです。また架空アース線とも呼ばれる場合があります。我々には空中地線といった方が意味が伝わりやすい気がします。
クリックすると拡大

冒頭の写真と同じ場所から400mmのレンズで撮った写真です。
クリックすると拡大人より右側には突起物を確認することができます。クリックすると特別に拡大するので取り付けられた金具が確認できると思います。この金具によって確実に雷を捕らえるののではないでしょうか。あるいは冬の積雪による被害を防ぐための「難着雪リング」(右の写真)かもしれません。
クリックすると拡大

突起物の形状がよく見える写真を拡大いたしました。やはりスパイラルではなくリングの突起物でした。
クリックすると拡大

ところが隣の鉄塔間の架空地線にはスパイラルのワイヤーが巻き付けられていました。さらに写真の中央の装置が鉄塔間に2ケ所に取り付けられていました。おそらくダンパーと呼ばれる振動を抑える装置だと思います。上の写真のリング上の突起物は付いていませんでした。同じラインなのに明らかに上のタイプとは違う架空地線でした。
クリックすると拡大

この動画の4本の太いケーブルで構成される送電線とは安定感が違うと思いませんか。こちらは送電線へのスパイラルロッド取付け作業の動画です。この時もすごいと思いましたが、今回の1本のケーブルでの作業を見てプロの仕事のすごさをさらに再認識いたしました。


完成した鉄塔との接続部分です。
接続部分にはいろんなものが取り付けられていました。
地上87m~121mで水平のケーブル1本にぶら下っての作業はいかがだったでしょうか。大変な作業だと思います。寒い日や強風の日もありました。
クリックすると拡大

今回の4本の巨大鉄塔を紹介します。冒頭で紹介した鉄塔が一番奥です。奥の鉄塔から順番に87m、106m、121m、107mの高さになります。
こちらの写真は2017年1月17日に撮ったもので、架空地線の工事は始まっていませんが送電線の取替工事を行っていました。クリックすると特別に大きく拡大するので。プロフェッショナル達(みのむし虫軍団)が送電線にぶら下っているのが判ってもらえると思います。
クリックすると拡大

同じ4本の鉄塔を別の角度から撮りました。左から87m、106m、121m、107mの高さの鉄塔です。写真をクリックするとさらに右側の鉄塔も含めて5本の鉄塔が写った写真を表示するように設定しています。こちらの写真は2017年2月15日に撮りました。クリックして出てくる拡大写真で、2本目と3本目の鉄塔にはすでに送電線交換用の滑車が取り付けられていることが判ると思います。
クリックすると拡大

房総線の鉄塔の位置を全てプロットいたしました。房総変電所から新京葉変電所の間が房総線です。Google地図上で確認できる鉄塔は109本ですが、ネット上では110本と書かれていました。国道296号線を跨ぐあたりに新しく建てられた鉄塔が含まれているのかもしれません。別画面で表示させると非表示にしている五井火力発電所と房総変電所を結ぶ送電線(五井火力線)の鉄塔を表示させることが出来ます。 
 赤白塗装の鉄塔
 シルバー塗装の鉄塔
 送電線の取替工事拠点の鉄塔
 房総変電所 新京葉変電所 江東変電所
 五井火力発電所 総出力 188.6万KW 使用燃料 LNG(天然ガス)
 ━━ 五井火力線 五井火力発電所~房総変電所
 ━━ 旧房総線  新京葉変電所~新野田変電所(旧・東東京変電所)


コメントの中でミケシマさんに紹介いただいた動画を紹介いたします。
Eテレ0655おはようソング「素晴らしき 世界 シリーズⅡ -高の界-」です。動画の頭から2分27秒のところから送電線の歌が始まります。その歌詞を枠内に紹介します。
(前奏) これなんだ 送電線 何かが するする 動いてる これなんだ ものすごく 高いところに 人がいる この世には 我々の 想像もしない 場所で こうやって 人知れず 守ってくれてる 人がいる 送電線 メンテナンス 送電線 高所 送電線 雪など 送電線 付着を防ぐ

(間奏) これなんだ ほぼ空中 何かが するする 動いてる 鉄塔と 鉄塔の 間を渡る 送電線 この世には 我々の 毎日を 守るために 緊張を 強いられる さまざまな 仕事がある 送電線 点検 送電線 今日も 送電線 誰かが 送電線 守ってる (エンディング)
 追伸 2017年2月17日
  残念ながら「-高の界-」の動画の配信は停止されました。

posted by SORI at 06:05| Comment(26) | TrackBack(2) | 送電線 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月18日

みのむし軍団 高圧送電線補修のプロフェッショナル

写真の上のカーソルがの場合はクリックすると拡大します。
クリックすると拡大
高圧線に何かぶら下がっています。一見、ミノムシのように見えるので、前からミノムシと呼んでいました。
ちなみに日本の高圧送電線の標準は右に3本と左に3本の計6本の組み合わせです。右か左のどちらかだけに電気を流していて、片方は予備になっています。

鉄塔の向こう側にも2つあります。上の写真でもよく見ると鉄塔の向こうに見つけることが出来ると思います。ここは鉄塔と鉄塔のスパンは517mです。
クリックすると拡大

拡大してみると人間でした。沢山の袋をぶら下げて、袋の上で作業をしているのです。ミノムシと呼んで失礼いたしました。高圧線の補修をするプロフェッショナルの方たちだったのです。
クリックすると拡大

別の角度から見てみました。片方は予備になっているために電気が流れていない方を補修することが出来るのです。ここは鉄塔と鉄塔のスパンは413mです。移動だけでも大変な作業だと思います。
クリックすると拡大

よく見ると、送電線から取り外した「らせん状の太い針金」を袋に入れているところです。
クリックすると拡大

らせん状の太い針金の正式名はスパイラルロッドです。電線に巻き付けて風音防止だそうです。着雪による被害防止にもなるそうです。電線の着雪は大きな上下振動の原因になるとのことでした。ぶら下げている網は、手に持っているスパイラルロッドを落とした時に地上に危険が及ぶのを防止するための落下防止の網だと思われます。おそらく工具などはひもで体につながれていると思います。
クリックすると拡大

上の写真は太陽が逆光方向のため、太陽がカメラ側に来るまで待ってから撮ったのがこちらの写真です。
クリックすると拡大

作業のやり方は静止画の写真では分かりにくいので動画を撮りました。古いスパイラルロッドを取り外す作業であることが判ると思います。
作業員の人は右に移動しながら作業を行っていることが判ってもらえると思います。ただし動画は7分53秒と長いため、早送りの動画も用意いたしました。
 クリックすると早送りを表示 → 6倍速 36倍速


こちらは別のチームです。こちらも古いスパイラルロッドを取り外す作業です。右側の人がスパイラルロッドを緩めて、左の人が取り外して袋に入れているのです。上の動画と下の動画のプレーボタン( )を両方クリックして同時に見ると時間の節約になります。こちらも早送りの動画を用意いたしました。
 クリックすると早送りを表示 → 6倍速 36倍速


スパイラルロッドを袋に入れているところです。
クリックすると拡大

スパイラルロッドの取り外しや取り付けは大変な作業ですが、強風時に電線から発生する風切り音(電線風音)の防止対策として,1973年から既設の電線にスパイラルロッド(弦巻素線)を巻きつける方法が適用されてきたそうです。このスパイラルロッドによる風音対策は電線自重や風圧荷重の増加,コロナ騒音の増加という課題が生じたために,電線自体に突起を設けた低風音電線である左図の送電線が1987年に実用化されたそうです。さらに風音低減特性とコロナ騒音が標準電線と同等な特性を併せ持つ低騒音電線が開発され,クリックすると拡大1000 kV 送電線に適用されたのが右の図だそうです。今回の新しい送電線はどのタイプになるのか気になります。
右の写真のように反対側の3段をよく見るとスパイラルロッドは巻き付いていないようなので、すでに過去に交換された可能性が高いです。


動画を撮っている時に偶然ですが、上空を飛んでいる飛行機が撮れました。開始から41秒後に画面の左下から飛行機が入ってきます。


飛行機が写っている瞬間の動画から画面を切り取りました。
クリックすると拡大

kazuさんのコメントで送電線の取替工事であることが判りました。こちらはスパイラルロッドを外していた2日後の2016年12日18日(日曜)に撮った写真です。冒頭の鉄塔から南方向に413m離れた場所に建っている隣の鉄塔です。鉄塔に沢山の人が登って作業をされていました。
クリックすると拡大

よく見ると、すでに送電線の取り外しを行っていました。3段の一番上の送電線はすでに碍子と送電線が離れていました。
クリックすると拡大

一番上の送電線を別の角度から大きく撮りました。4本共に滑車に吊り下げられていました。
クリックすると拡大

上から2番目はまだ取り外し作業中のようでした。
クリックすると拡大

一番下は準備だけで作業には入っていませんでした。
クリックすると拡大

高い鉄塔には、このリフトで登ります。動力はエンジンで自力で登って行きます。4枚上の写真にも写っています。
クリックすると拡大

さらに一つ南側の鉄塔では、送電線を滑らせる準備が終っていました。
クリックすると拡大

その4つの滑車の部分を拡大いたしました。
クリックすると拡大

さらに一つだけを拡大いたしました。複数の鉄塔分の準備が出来たら、かなりの長さの送電線を一気に滑らせて、交換するのだと思います。滑らせるところは見ものですが、気がつくことが出来るかどうかが問題です。
クリックすると拡大

今回の送電線の鉄塔をプロットしてみました。今回の高圧送電線は房総変電所と新京葉変電所を結んでいることがプロットしてみて判りました。送電線名は房総線で電圧は50万ボルト(500KV)です。1966年に日本初の500KV設計で、275KVで運用し、1973年から500KVでの運用に変更しました。東京電力初の500KV送電線でもあります。鉄塔数は110基です。
送電容量は43年前の1973年当初は鋼心アルミ合金より線ACSR 410mm2×4導 体で310万KWの 送電容量だったそうです。その後、材質を変えることでを有していたそうです。その後の従来のACSRと同サイズで鋼心耐熱 アルミ合金 より線TACSR410mm2×4導 体を使用し,430万kWに増大したそうです。今回の送電線の交換は容量アップが目的かもしれません。送電線の取替工事拠点の鉄塔( )には沢山の工事機材が置かれています。この鉄塔より北側は数年前に送電線が交換されており、今回の工事は、この鉄塔より南側の送電線が交換されるそうです。
現在の関東の500KV以上の送電線マップ→ポチッ
 赤白塗装の鉄塔
 シルバー塗装の鉄塔
 送電線の取替工事拠点の鉄塔
 新京葉変電所 房総変電所
 五井火力発電所 総出力 188.6万KW 使用燃料 LNG(天然ガス)
ラベル:鉄塔 送電線
posted by SORI at 23:59| Comment(24) | TrackBack(3) | 送電線 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
Seesaaブログのコメント設定について・・・
1 コメント入力に関する設定 →ポチッ
2 コメントリスト         ポチッ
3
昨日の記事ランキング
    先週(月~日)の記事ランキング
      先月の記事ランキング