
先日掲載した熊谷草(クマガイソウ)の記事「熊谷草の花の見ごろはいつ?」の中で掲載を予告していた熊谷草の森の中の「イカリソウとキンランとギンラン」を紹介したいと思います。この森には今年2020年には4月10日と4月22日と4月30日と5月03日の4回訪れました。
2020年4月10日 2020年4月22日 2020年4月30日 2020年5月03日




1ケ月の間に4回も訪れたのは初めででしたが、最初に訪れた4月10日は熊谷草が蕾の状態だったので、花の変化を確認するチャンスだと思い続けて訪れました。イカリソウ(錨草)が最も沢山咲いていたのは4月22日でしたが、比較的長く見ることが出来て5月3日にも咲いていました。キンラン(金蘭)とギンラン(銀蘭)が沢山咲いていたのは5月3日でした。それでは錨草と金蘭と銀蘭を紹介したいと思います。
イカリソウ(錨草) キンラン(金蘭) ギンラン(銀蘭)



イカリソウ(錨草) メギ科 イカリソウ属


門 被子植物門 Magnoliophyta
綱 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 モクレン亜綱 Magnoliidae
目 キンポウゲ目 Ranunculales
科 メギ科 Berberidaceae
属 イカリソウ属 Epimedium
種 イカリソウ Epimedium grandiflorum
漢字 錨草 碇草
別名 三枝九葉草(さんしくようそう)
英名 Epimedium、Barrenwort、Bishop's hat、Fairy wings
Horny goatweed

この森ではイカリソウはひっそりと広範囲にいろんな場所に咲いていました。比較的近いところに咲いていることもありましたが、群生する感じでは咲いていませんでした。イカリソウは日本の北海道南部から本州・四国・九州の、主に太平洋側の平野部や低い山地に分布ししているそうです。

道から離れた場所に咲いているので、近づくと他の野草を踏みつけてしまうので、いずれも遠くから撮りました。地方によってはカグラバナ、ヨメトリグサとよばれることもあるそうです。
イカリソウ属は約60種があり、それらがアジアから南ヨーロッパや北アフリカにかけて分布し、古来から日本には下記の約十種が自生しています。右下の小さな縦長の写真はネットから転用させていただいたサイコク・イカリソウ(西国碇草)です。※印は牧野新日本植物図鑑に掲載されていたイカリソウ属です。

※イカリソウ 淡紫色
※バイカイカリソウ 白色
※ウメザキイカリソウ 白色 牧野博士記載
サイコクイカリソウ 白色 絶滅危惧II類(VU)
ヤチマタイカリソウ 白色 準絶滅危惧(NT)
ヒゴイカリソウ 白色
キバナイカリソウ 淡黄色
クモイイカリソウ 淡黄色 絶滅危惧II類(VU)
※トキワイカリソウ 白色~淡紫色~薄赤紫
ヒメイカリソウ 白色
オオバイカイカリソウ 白色
※ホザキノイカリソウ 黄&白 江戸時代に渡来した中国原産の栽培種

それでも400mmのレンズでなんとか撮りました。明るく見えますが森の中で暗いので手振れしやすいけれどもなんとか撮れました。本当は近づいて下からは花の形が判るように獲りたかったのですが、遠くからの撮影のため水平からの写真ばかりです。

最も沢山の花を付けていたイカリソウです。

別の角度からも撮りました。

花を拡大いたしました。この薄紫色のイカリソウが多かったです。

比較的赤みがかった花もありました。

牧野新日本植物図鑑の記載内容を紹介します。漢名で出てくる 淫羊藿は江戸時代に薬草として渡来した中国原産のホザキノイカリソウ(Epimedium sagittatum Maxim.)と思われます。それ以外に心葉淫羊藿(E. brevicorum Maxim.)やヤチマタイカリソウ(E. grandiflorum Morr.)も候補です。

丘陵や山すそなどの樹の板にはえる多年草本。根茎は横にはい凹凸に屈曲し、質は硬く、褐色。硬い多数のひげ根があり、ふつう数本の茎が叢生する。茎の高さは15~25cmぐらい、基部に鱗片がある。根茎には長い柄があり、ふつう2階3出複葉である。小葉にはやや長い小江柄があり、長さ3~10cm、卵形で先は鋭尖し、刺毛状の細いきょ歯があり、基部は心臓形、両側の小葉はやや左右不同形である。


使われていた難しい漢字:叢 萎(委) 藿(霍)
キンラン(金蘭) ラン科 キンラン属
この「熊谷草の森」は以前の記事で「キンランの森」で紹介させていただいたように沢山のキンランが生えていますが、4月22日は花が開いているキンランは数えられるほどでした。
その数少ない4月22日に咲いていたキンランの花です。

5月3日には沢山のキンランが咲いていました。この日は熊谷草の花の状態を確認するのも目的でしたが、最大の目的はキンランの花でした。4月30日には熊谷草の花は萎みかけていたので5月3日の状態は予想がついていましたが、写真を撮って記録を残すのが熊谷草の目的でした。
キンランの分類を紹介します。元々、日本では、ありふれた和ランの一種でしたが、1990年代ころから急激に数を減らし、1997年に環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)にしていされました。
門 被子植物門 Magnoliophyta

目 ラン目 Orchidales
科 ラン科 Orchidaceae
属 キンラン属 Cephalanthera
種 キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
漢字 金蘭

予想通り見事な花を見せたくれました。

美しい立ち姿のキンランです。この日はキンランを熱心に撮る方もおられました。このキンランには時間をかけて撮られていました。ン

見事に花が開いてました。

上の写真の手前の3本を拡大いたしました。

これで花の形が判ると思います。上の写真の左端の花を拡大いたしました。

こちらのキンランの立ち姿もきれいです。

道沿いに沢山のキンランが咲いているのが分かってもらえると思います。

持ち帰りたくなる人もおられると思いますが、ラン科植物の中でも特に特殊な蘭菌(樹木共生菌)と共生しているので移植してしまうと最初は元気でも結局は短い期間の内に枯れて途絶えてしまうのです。ここで生えているうちは毎年きれいな花を咲かせてくれるのです。

沢山の花が咲いていますが、森の中で暗いために、レンズの絞りが開いていて焦点深度が狭いのでピントが合うっているのは1か2つの花だけです。

花を拡大いたしました。
一つの花だけだと華やかな洋ランと思ってしまうかもしれません。

沢山の花が付いたキンランです。

こちらも見事なキンランでした。今までに掲載したキンランの記事を紹介します。タイトルをクリックすると記事を表示します。後ろの数値は2020年6月6日時点の今までのアクセス数(閲覧数)です。
キンランの花が沢山咲きました。 15,891件
キンランの森 3,642件
キンランの公園 1,280件

牧野新日本植物図鑑のキンラン(金蘭)の記載内容を紹介します。
低地の山林中にはえる多年生草本、高さ50cmになる。葉は10個内外で鮮緑色、長楕円形で基部は茎を抱き、先端は尖っている。縦にあらいしわがあり、質はうすいが丈夫である。春にギンランと時期を同じくして黄花を10個内外つけた総状花序に開き、花下には短い包葉をともなっている。花は直立して全開せず、長さ1.5cmで広楕円形をしている。花被片は卵状皮針形をして鈍頭、狭脚である。唇弁には距があり、3裂し側裂片は大きく低平な広卵形、内に赤橙色の縦のうねが数本ある。ずい柱の先端には円大な葯がある。 [日本名] 花色に基ずいて金蘭といい、ギンランに対するもの。

ギンラン(銀蘭) ラン科 キンラン属
2014年にも、この森でギンラン(銀蘭)を見かけたので銀蘭が生えていることだけは分かっていましたがなかなか見つけることが出来ませんでした。金蘭に比べると銀蘭は圧倒的に少ないのです。そんな中で見つけたのが写真の銀蘭です。道からかなり離れた場所なのですが見つけることが出来ました。

こちらには2本の銀蘭が生えていました。金蘭と同様に特殊なラン菌(樹木共生菌)と共生しているので持ち帰りは厳禁の植物なのです。金蘭は環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)に指定されていますが、銀蘭は絶滅危惧種には指定されていませんが、少なくとも我々の周りでは金蘭よりも少なく、か弱いように感じます。似た種類にユウシュンラン(祐舜蘭)がありますが、そちらは絶滅危惧II類(VU)に指定されています。イカリソウとキンランと同じように銀蘭の分類を紹介します。金蘭と同じラン科キンラン属です。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida
目 : ラン目 Orchidales
科 : ラン科 Orchidaceae
属 : キンラン属 Cephalanthera
種 : ギンラン Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume
漢字 銀蘭

角度を変えて拡大いたしました。ギンラン(銀蘭)に似た種としてササバギンラン(笹葉銀蘭)があります。ギンランが10~25cmの背丈に対してササバギンランは30~50cmになる上に、花より上に葉の先端が上に出る特徴があります。

花を拡大いたしました。この日はこれ以外に2ケ所つまり計4カ所で5本の銀蘭を見つけました。金蘭にに比べると花の色が目立たないのと道から離れた場所に生えているので見つけるのは難しいのです。野草を守るために原則道からは離れないのです。銀蘭に関しては、自由に入れる私の家の近所の雑木林の方が多く見つかるかもしれません。
今までの記事の中でギンランの写真が少なくとも1枚以上入った記事を紹介します。タイトルをクリックすると記事を表示します。後ろの数値は2020年6月6日時点の今までのアクセス数(閲覧数)です。
ぎんらんを見つけることが出来ました。 6,282件
キンランの森 3,642件
熊谷草の花の見ごろはいつ? 1,042件

牧野新日本植物図鑑のギンラン(銀蘭)の記載内容を紹介します。
山野樹陰の地にはえる多年草草本で地下に軟骨質の細根を束生している。高さおよそ15~20cm、茎は直立しやせ細っている。葉は2~3で茎の上部に着き、楕円形または卵状楕円形で鈍頭、基部は軽く茎を抱き、質がうすく紙質である。4~5月頃、茎の先に3~4の白色小花を開く。短小な包葉があって最下のものも花より短かい。花は長さ1cm、直立して平開しない。外花被片は3で楕円状皮針形をしている。内花被片は2で外花被片より短かい。唇弁に距があって内花被両片間から短い角(ツノ)状に出ている。さく果は狭長楕円形で柄がない。 [日本名] 白花を開くので銀蘭といい金蘭に対すての名である。

私が持っている牧野新日本植物図鑑(二十三版 1972年11月30日発行)に掲載されていた牧野富太郎博士の93歳の在りし日の写真を紹介します。

右の写真はWikipediaから転用させていただいた1934年の71歳か72歳の牧野富太郎博士です。1番下の写真は右下の写真から切り取ったもので、写真をクリックすると切り取り前の拡大写真を表示します。江戸時代に土佐国佐川村の商家に生まれ、明治になった時は6歳でした。3歳で父を、5歳で母を、6歳で祖父を亡くしたそうです。その後は祖母と番頭に育てられ最終学歴が小学校中退でありながら22歳の時に


生れ 土佐国佐川村(高知県高岡郡佐川町)
生誕 文久2年4月24日(1862年5月22日)
死没 昭和32年(1957年)1月18日 94歳没
牧野富太郎牧野博士が著者である新日本植物図鑑の初版は昭和36年(1961年)6月30日なので、この写真が撮られた時期は、図鑑や自叙伝などの書物の執筆もされていたのかもしれません。

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- マツバウンラン(松葉海蘭)の花 刈られてしまいました。
- 雑木林の藤の花 つるの写真を追加しました。
- ネコヤナギの花は雄花(雄株)でした。
- キンランの花が沢山咲きました。
- 我家のバラも咲き始めました。
- ベビーズティアーズ(ソレイロリア・ソレイロリー)
- 980円のデンドロビウム
面白いかたちをしています。
そしてたくさんの種類があるんですね!
キンラン、蕾のときもとても可愛いですね。
たくさんの花をつけたものはとても華やかで見事です。
キンランがあるならギンランも…
こちらはキンラン以上に希少な植物でしょうか。
楚々として、キンランとは違う美しさがあります。
金閣寺は見事ですが、銀閣には別の魅力で感動しました。
そういう感覚かな?(ちょっと違うかな^^;)
急に暑くなりました。
形と名前からでしょうか、イカリソウには不思議な魅力があります。今までキンランとギンランは記事を掲載したことがあったので、イカリソウの記事を書きたかったのです。この森に訪れた時にイカリソウの写真を熱心に撮られている方がおられました。
確かに飛んでいるようにも見えます。海の中でただやっているクラゲのようでもあります。
お花の名前はなかなか覚えられなくて困ります
キンランのお花は可愛いですね
可憐なお花って感じですね 素敵!
金蘭は華やかで、銀蘭はしっとり大人の雰囲気で
それぞれ違う美しさですね( ^ω^ )
こんな風に花を愛でられる場所があるって素敵です=(^.^)=
小さいときから、イカリソウはよく見られていたのですね。私は今の場所に引越してきてからです。いずれも可憐な魅力的な野草です。
ほんとイカリの形をです。この場所は女性の方も写真を撮りに来られていました。や地用を採っている人も見かけたことがあります。
6月に入ったので、別の花が見れるかもしれないので一度見に行きたいと思っています。
するんですね
以前野草園で撮りましたが6月2日に
訪れた時には見れませんでした。
野草園は6月2日が新型コロナで休園していて6月2日が開園日だったのですね。新型コロナのために見れなかった野草も沢山あったことでしょう。本来でも開園日は3月1日に設定されているのは野草を大切に育てるためのでしょうね。来年は見ることが出来そうですね。
気候的には北海道南部から本州・四国・九州まで咲いているそうですが、私が関西に住んでいたころは見かけなかったので、限られた場所でしか生えていないのかもしれません。私が住んでいる近所の雑木林には少ないけれども咲いていますが、今年は探したけれども見つけられませんでした。
まさに妖精の羽みたいですね~^^
英名の「Fairy wings」に目が留まられたとはさすがです。ほんとピッタリです。イカリソウの隠れファンも多いのかもしれません。
イカリソウ、花が錨に見えますね(^^)v
写真を見ていたら、箱根湿生花園に花を見に
行きたくなりましたがコロナの影響でドライブは
自粛中です。
イカリソウは意外と奥が深いように感じます。イカリソウ属には滋養強壮になる薬草もあるようです。
山野に自生して、一生懸命咲いているような気がします。
SORIさん、これらのお花について色々くわしくおしらべになっていて、頭がさがります。あまりたくさんの人に見つけられることなく、ひっそりと咲いていてほしいです。
幸いにも場所は場所は知られていない上に地元の方が方がパトロールも行って守られています。少なくとも2014年に初めて来た時と変わらず花を咲かせ続けています。この場所が最も適した環境なので静かに見守ってほしいものです。
綺麗ですねー
花弁が、ランのようです。
小さな花ですがちゃんとランの特徴が出ています。確かに、花の写真だけを大きく拡大すると洋ランと区別がつかないかもしれません。
江戸時代に土佐国佐川村に生まれ、明治になった時6歳だった牧野富太郎ですが、3歳で父を、5歳で母を、6歳で祖父を亡くしたそうです。最終学歴が小学校中退で理学博士で、昭和32年1月18日(1957年)に亡くなる寸前まで植物学を探求し続けて、命名は2500種以上、自らの新種発見600種余りと我々の想像が遥かに及ばない偉大な人です。
キンランも実に可憐!!
イカリソウもキンランも知る人ぞ知る人気の花のように感じます。6年前よりも本格的な写真を撮る方が増えたようです。
イカリソウまで植生しているなんて今では奇跡のような森ですね!
もちろん保護地区なんでしょうね。
私の住んでいる周囲は里山ですが雑木林がすくなく杉林と竹がはびこり
葛に覆われた森が殆どで下草の花を見る事が無い状態が悲しいです。
何だか優雅です。
言われる通り奇跡のような場所なのです。 この森は行政が法律に基づいて保護されているのではなく地元のボランティアの方たちが乱獲や盗掘が行われないように、整備して表示を行うなど目立たせることで保護活動を行っている場所なのです。貴重な野草が自然のままに沢山見れることから紹介したいところですが、広範囲の人に知られると盗掘の可能性もあるかもしれないので場所は明かせないのです。関東の某所とだけ申し上げます。
確かに鶴が飛んでいるようにも見えます。いろんな名前が付けられそうです。
大きな牧野植物図鑑を子供でありながら使われていたとはすごいです。山野草が好きになられたのが分かる気がします。私も子供のころから山野草が好きでした。
子供の頃は六甲山周辺が散策場所で食虫植物だけでもが6種類(モウセンゴケ、イシモチソウ、コモウセンゴケ、タヌキモ、ミミカキグサ、ムラサキミミカキグサ)ありました。