



「想像の象」は、「三猿」のある神厩舎(神厩)の参道を挟んで向かいの上神庫に飾られています。上の写真の大きな木の陰の左の建物が「三猿」の神厩舎で、右の建物が上神庫です。上神庫は三神庫の一つです。
その上神庫に妻面の軒下の壁に藤菜象が2頭飾られており、その像が「想像の象」と呼ばれる彫刻です。「想像の象」の下絵の作者は狩野探幽と言われ、探幽が実物の象を見たことがなかった事から「想像の象」と呼ばれるよになったそうです。上神庫は他の三神庫の中神庫と上神庫と共に寛永12年(1635年)に建てられた桁行7間、梁間4間、切妻、銅瓦葺き、校倉造り、高床の上倉庫で三棟合わせて内部には「百物揃千人武者行列」に使用される1200人分の装束や舞楽用の装束などが収められています。

妻面は見事な装飾で飾られていました。

妻面の2体の象の部分をさらに拡大いたしました。「想像の象」は日光三彫刻の中でも、もっとも大きくて鮮やかな色彩が施された彫刻でした。龍のように見える彫刻は麒麟(きりん)だそうです。下段中央の緑の顔の鬼の彫刻らしきものもありました。興味のある方はクリックして確認してみてください。

こちらが右側の象の彫刻です。象は恐ろしい顔をしており爪があることから獅子をイメージしている気がしますが、長い鼻やや二本の大きな牙は本物と似ています。さらに耳は形が違いますが大きいことがきちっと伝えられているのに驚かされました。

左側の象は尻尾の先が何本にも分かれているのが特徴です。3つ又の尾と表現されている記述もありましたがよく見ると裏側にも分かれた尾を見ることが出来るので、尾が分かれているのではなくて、ふさふさとした毛が生えた尾を表現したかったのではないでしょうか。2体の象の様子はかなり違います。下の象はどちらかと言えば獅子に近く上の象の方がお腹が大きくて実際の象に近い感じです。2体が、これほど違う理由は、狩野探幽が雄雌を描いたのか、別々に想像して書いたものなのか、調べた範囲ではわかりませんでした。上神庫が建てられた1635年以前に日本に象が来たは次の通りなので、想像で描くのも仕方ないことのようです。その後は1728年になるようです。
1575年 大友宗麟への献上
1597年 豊臣秀吉への献上
1602年 徳川家康への献上

2体の象の彫刻以外に同じ妻面に象の頭の彫刻もありました。


下段中央の緑の顔の鬼らしき彫刻も拡大いたしました。ネットで調べた範囲では、この彫刻の記載は見つからないので、見た目から「鬼らしき彫刻」ということにいたしました。象や麒麟の彫刻が飾られている面なので、何かの動物である可能性もあります。顔の周りの飾りは鬣(たてがみ)のようにも見えます。もし「たてがみ」だとすればライオン、つまり獅子ということになります。

上神庫の別の角度からの写真です。左側が「向拝」側です。沢山の灯篭(燈籠)が印象的です。この場所は陽明門から33段(12段+21段)下がったところなので外様大名が寄進した燈籠です。

三神庫は下神庫・中神庫・上神庫の総称です。春秋の祭りの1週間ほど前から準備のため扉を開けるので内部をのぞけるそうです。いずれも奈良の正倉院に代表される校倉造り(あぜくらづくり)を模した建物です。上神庫はすでに紹介したので下神庫と中神庫を紹介いたします。こちらが中神庫(なかじんこ)で桁行9間、梁間3間、入母屋、銅瓦葺きの建物です。左に少し写った建物が上神庫で、右に少し写った建物が下神庫です。

こちらが下神庫(しもじんこ)で桁行7間、梁間4間、切妻、銅瓦葺きの建物です。左に少し写った建物が中神庫です。


表門をくぐって左に曲がると「三猿」の神厩舎と「想像の象」の上神庫が目の前にあります。
写真をクリックすると広い範囲を表示します。

現代人は小さな頃から動物を知って
いますからこういった実在する動物を
想像し表現する機会はまず無いでしょう。
そういった意味で貴重な彫刻だと思います。
単なる架空の生き物を想像するよりも
ずっと真剣味!?というか迫力が違うような気がします^^
実際の象と似ていないとの表現をよく見かけますが、見たことがない動物を描いているわけですから、非常に似ていると思います。一番の特徴の鼻は、そっくりです。狩野探幽が描いたというのも値打ちがありますね。
本物を見た事ないのかしら?凄い描写力。感動です。
上神庫が作られたのは1635年に対してそれまでに日本に象が来たのが1575年(大友宗麟への献上)と1597年(豊臣秀吉への献上)と1602年(徳川家康への献上)で一般には見ることが出来なかったと思います。その後は鎖国になったのでなおさらですね。
そんな中で、こんなにも迫力のある象を描いたのはさすがです。
迫力のある象ですね。
また行く機会があったら見てみます。
この辺りを見学しているときに、偶然ですが団体の観光客のガイドさんが「想像の象」のことを話しておられたのを横で聞いて写真を少し多めに撮りました。
凄い彫刻ですね。
日光東照宮には沢山の彫刻があるので、沢山の貴重な歴史があるのでしょうね。
想像の象 も見てきましたがSORIさんの解説 解りやすいです
東照宮には何度も行っているのに
想像の象は知りませんでした。今度行った時はしっかり見てきます。
可愛く描くと、東照宮には似合わないんでしょうね。。
何せ、侍の時代ですから。.
先ほどはご来訪頂きありがとうございました。
「狩野探幽」の想像した象の話は以前に聞いた事があったのですが、実際に写真で見ることができてうれしいです。狩野探幽が象を実際に見て描写したらしたで、それなりに素晴らしものが描けたでしょうけれど、想像で描いたもであっても生き物の生々しさが表現されている事に感動いたします。
とっても嬉しいです。
東照宮、懐かしいです。小学校の時も、大人になってからも、この場所に
行くと必ず雨。
お天気羨ましいですね!
象の彫刻を、じっくり見たのは初めてでした。帰ってから写真を見返してみるとさらに発見がありました。
想像の象の彫刻を知らない方も結構おられるようなので、紹介できてよかったです。ありがとうございます。
さすが狩野探幽の絵がもとになっているだけの荒々しさです。じっくりと見ると味があります。
確かに狩野探幽にが実際に見た象の絵も見てみたいです。どのような絵になるのかわからないので、それも我々の想像の象の絵ですね。
小学校のころの思い出の場所なのですね。是非とも次回は晴れることを祈っております。私はの最近は、どこに行くのも天気を優先して決めています。
クリックしてじっくり拝見しました☆
とても精巧な彫刻ですね~
東照宮で 見てみたくなります(^^)
想像の象、初めてしりました。
よく出来ていますね~
牙があるので、マンモスでしょうか?
拡大写真を見ていただいてうれしいです。沢山の彫刻があるのに驚かされました。
じっくりと考えてみると象は鼻が手の代わりをする不思議な動物ですね。初めてみた人は驚いたと思います。
顔がとっても悪そうな感じに見るのは私だけでしょうか?
形もゾウなのに、でも違う動物にも見え、不思議な感じがしますね。
ライオンのような肉食獣と思われていたのかもしれません。長い鼻を持った魔物のような存在だったのでしようね。