

上の写真は関東のある森の中の2020年4月10日の熊谷草(クマガイソウ)です。実は6年前の2014年5月にも紹介した場所ですが乱獲や盗掘を防ぐために、その時も「関東の某所」とさせていただきました。

場所の雰囲気を紹介したいので6年前の2014年5月3日に行った時の写真を紹介します。我家の愛犬(むさし)はまだ14歳で元気盛りでしたが、17歳8ケ月と1日目(2017年12月5日)に眠りにつきました。熊谷草の写真を撮った同じ年に「キンランの森」として紹介した場所でもあります。

いろんな場所に熊谷草(くまがいそう)が生えていました。この場所には少なくとも11本のクマガイソウが芽を出していました。蕾らしいものは見当たりませんが、比較的大きな集団なので花が全く咲かないとは考えにくいのでこれから蕾が伸びてくるのかもしれません。

この熊谷草が2014年5月3日に見事な花を見せてくれていた右の小さな写真の熊谷草です。


上の写真の熊谷草を横から撮ったのがこちらの写真です。沢山の場所に熊谷草が群生していました。ここには少なくとも6本のクマガイソウが生えていて蕾もついていました。クマガイソウは環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類(VU)とされています。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta

目 : ラン目 Orchidales
科 : ラン科 Orchidaceae
属 : アツモリソウ属 Cypripedium
種 : クマガイソウ Cypripedium japonicum
別名 : ホロカケソウ
原産 : 日本固有種(北海道南部から九州に分布)

上の写真の2の株を拡大いたしました。こちらが冒頭の写真です。

花の蕾を拡大いたしました。熊谷草の花の写真はネットでも沢山出てくると思いますが、このような蕾(つぼみ)の写真は比較的少ないのではないでしょうか。

1本だけ花が開きかけているクマガイソウがありました。日当たりが良かったようです。でもまだ花は開いていませんでした。

花を拡大いたしました。1枚の背萼片と2枚の背花弁が垂れ下がっているので完全に開いていないことが分かります。背萼片と背花弁が上に持ちあがると花が開いたことになるのだと思います。

このときはニリンソウも咲いていました。こちらの森では熊谷草以外にも貴重な野草が沢山見られます。一例をリストアップしました。今回見かけたものを着色いたしました。
ノミノフスマ(なでしこ科)、ハコベ(なでしこ科)、ハルジヨン(きく科)、ヒトリシズカ(せんりょう科)、フデリンドウ(りんどう科)、ホタルカズラ(むらさき科)、ホトケノザ(せんりょう科)、ミツガシワ(みつがしわ科)、ミツバツチグリ(ばら科)、ムラサキケマン(けし科)、ムラサキサギゴケ(こまのはぐさ科)、ムラサキハナナ(あぶらな科)、ヤブレガサ(きく科)、レンゲソウ(まめ科)、ヤセウツボ(はまうつぼ科)、アマナ(ゆり目)、チゴユリ(ゆり目)、ヤマユリ(ゆり目)、ナルコユリ(ゆり目)、ホウチャクソウ(ゆり目)イカリソウ(めぎ科)、イチリンソウ(きんぽうげ科)、ウラシマソウ(さといも科)、マムシグサ(さといも科)、アオマムシグサ(さといも科)、エビネ(らん科)、オドリコソウ(しそ科)、カキドオシ(しそ科)、カラスノエンドウ(まめ科)、キンラン(らん科)、ギンラン(らん科)、シャガ(あやめ科)、ジュウニヒトエ(しそ科)、ツルカノコソウ(おみなえし科)、ニリンソウ(きんぽうげ科)

イチリンソウも沢山咲いていました。

ヒトリシズカも咲いていました。

ヒトリシズカの花を拡大いたしました。熊谷草の蕾が開きそうな時期にもう一度訪れるつもりで家に帰りました。


写真のように見事に咲いていました。
12日前の4月10日に4つの蕾が見られた熊谷草が右の写真です。4つともに一番きれいな状態になっていることが分かってもらえると思います。両方の写真をクリックすると比較できると思います。

別の角度からも撮りました。

少し離れた場所でも3つの花を咲かせた熊谷草を見つけました。

花を拡大いたしました。

上と同じ花です。少し下側から撮ると花の上に出ている葉(包葉)が写ります。この写真で熊谷草の花の構造を説明いたします。ラン科の花は基本的に下記およびネットから転用させていただいた右下説明図のように3枚の花弁と3枚の萼(がく)つまり萼片で構成されています。
熊谷草(クマガイソウ)は唇弁は大きく袋状に膨らみ、側花弁は背萼片と見た目が同じになり、

外花被片(萼片) : 背萼片x1 側萼片x2
内花被片(花弁) : 唇弁x1 側花弁x2

花柄子房が写った上から撮った写真があったので掲載します。
上の写真と同様に、写真をクリックすると文字無し拡大写真を表示します。

この日は徹底的に散策して花が咲いた熊谷草の写真を撮りました。北斜面に咲いた熊谷草に太陽の光があたっています。

別の角度の写真です。

上の場所の中で光が当たった花です。逆光ぎみの熊谷草の花は透き通っているようできれいです。

別の場所のクマガイソウの群生です。

上の写真の左側の部分を拡大しました。

光が裏からあたっている花を拡大いたしました。

歩いていると別の場所でも見つけました。

クマガイソウ以外も紹介します。こちらは森の中で沢山見られた沢山見られたスミレです。スミレは沢山の種類は分かりませんが、タチツボスミレとマルバスミレでしようか。ここで見られるスミレの一部を紹介します。
アオイスミレ(すみれ科)、ニオイタチツボスミレ(すみれ科)、アカネスミレ(すみれ科)、ニョイスミレ(すみれ科)、コスミレ(すみれ科)、タチツボスミレ(すみれ科)、マルバスミレ(科)

この森は以前の記事で紹介したように沢山のキンランが生えています。ただし、4月22日は写真のように花が開いているキンランはまだ少なかったです。12日前の4月10日にはほとんど咲いていませんでした。

ここはシダの仲間のクサソテツも沢山生えていました。
界 植物界 Plantae
門 シダ植物門 Pteridophyta
綱 シダ綱 Pteridopsida
科 コウヤワラビ科 Onocleaceae
属 クサソテツ属 Matteuccia
種 クサソテツ Matteuccia struthiopteris

イカリソウは一番花が目立つ時期でした。写真を沢山撮ったので別記事で紹介したいと思います。

美味しそうなタケノコも地面から顔を出していました。この森はタケノコを採る整備された竹林も隣接しているのです。その竹林は立ち入り禁止なのですが、この日(2020年4月22日)の限られた時間に限てサプライズがありました。そのサプライズを紹介したいと思います。

2020年4月22日のサプライズを紹介します。
森に隣接して立ち入り禁止の竹林があるのですが、実はその竹林の中に写真のように沢山の熊谷草が咲いているのです。この写真は竹林の外の森から焦点距離400mmレンズで撮った写真から切り取って掲載いたしました。普通に歩いていると熊谷草が生えていると気が付かない距離なのです。


上の写真の中央部分を切り取りました。実は竹林の関係者の方たちが着ていてこのエリアへに入ることを許可してもらえて間近で写真をとることが出来たのです。その写真を紹介させていただきます。

実は地域新聞に掲載するための撮影に来られていて、そこに立ち会うことが出来た人たちだけがこのエリアに入ることが出来たのです。三脚を使って撮影されているのが地域新聞用の写真を足られている方です。そのすぐ横まで行って写真を撮ることが出来たのです。

普段は中に入れない場所で撮った貴重な写真を、ここから14枚紹介します。中に入れない場所ではありますが、場所を示す竹と針金でマークされていました。

このようなクマガイソウの群生が沢山ありました。

ここには6つの花が咲いていました。

竹林の中は不思議と熊谷草に似合っていました。この写真の中だけで、蕾も入れて14の花が咲いています。

花の拡大した写真も紹介します。

1時間後に、近くを通りましたが、すでに柵が閉められていて近くにも行くことが出来ませんでした。ほんとラッキーだったのです。

このエリアだけで24の花が咲いた群生でした。

これも別の群生です。

どれも熊谷草の見事な群生でした。

花の拡大写真です。

蕾の状態もあることから、花は開いたばかりの一番いい状態だったのだと思います。だからこそ新聞用の写真の撮影に来られていたのかもしれません。

小さな群生もしっかりと守られていました。

熊谷草の姿が分かる写真も掲載します。

このサプライズエリアには熊谷草だけでなくニリンソウも沢山咲いていました。

2020年4月30日にも見に来てみました。もちろん運動不足解消のための弁当持ちのウォーキングのついでに行ってみたのです。2014年5月3日に見つけて私として基準クマガイソウとしている熊谷草は、すでに萎れかかっていました。2014年の時より早いことが分かりました。

花を拡大いたしました。花が萎れ始めていることが分かっていただけると思います。

花が健全な熊谷草もありました。

ジュウニヒトエ(しそ科)かあるいは近い種類も花を咲かせていました。この時は様子を見に来ただけなので写真を撮ってすぐに森を離れました。


驚いたことに2014年の5月3日は最高の状態の花の基準クマガイソウは完全に萎れていました。同じ5月3日とは思えない違い出した。
右の小さな写真が2014年5月3日の基準クマガイソウです。

花を拡大いたしました。完全に花が萎れましたが原型は留めています。

こちらのエリアの熊谷草の花も左上の1つの花を除いて萎れていました。

こちらの2本の花も萎れていました。

4月22日欄で紹介した北斜面で太陽の光が当たるエリアの熊谷草の花も萎れていました。

驚いたことに上で紹介の立ち入り禁止の竹林に生えている熊谷草だけは、半分くらいはきれいに花を咲かせていました。写真をクリックすると萎れた花と、咲いている花が分かると思います。

4月30日に熊谷草の花が萎れ始めていたので熊谷草に関しては状態を確認するだけで、本来の目的はキンランを見ることでした。記事「キンランの公園」で紹介した通り5月2日に別の場所のキンランが満開状態だったので、翌日に沢山の金蘭が生えているこの森に見に来たのです。

たしかにキンランは最高の状態でした。キンランの花も沢山撮ったので別の機会に紹介したいと思います。

この森はアオマムシグサ(or マムシグサ)も沢山咲いています。

これがアオマムシグサ(or マムシグサ)の花です。

エビネの花は咲き始めたばかりでした。これからきれいになっていくのだと思います。

上で紹介したクサソテツの群生もきれいでした。

ヤマユリはまだ花が咲いていませんでした。6月に咲くと思われます。

花が咲いていないこともあり種類は分かりませんが、大切に支柱が建てられているので写真を撮りました。

こちらの植物も大切に保護されていました。

ギンランも見つけました。歩き回って数本見つけたので別の機会に紹介したいと思います。

牧野富太郎博士の牧野新日本植物圖鑑(二十三版 1972年11月30日発行)に掲載されている熊谷草を紹介します。59年前の1961年6月30日(昭和36年)に初版が発行された植物図鑑です。


熊谷草と言えば、源平合戦になぞらえて名前が付けられた敦盛草(アツモリソウ)を説明しなければなりません。熊谷草(クマガイソウ)の名前の元が熊谷直実(くまがい・なおざね)ならば敦盛草(アツモリソウ)は平敦盛(たいらの・あつもり)なのです。熊谷直実は平氏の平貞盛の孫でしたが、後に源頼朝に仕えることになり源氏側として寿永3年(1184年)2月の一ノ谷の戦いで平敦盛を打ち取る因縁の関係なのです。礼文島のレブンアツモリソウは本種の変種だそうです。牧野博士によれば、熊谷草の花は径8cmmほどで、敦盛草の花は径5cm内外だそうです。敦盛草の花の写真はネットから転用させていただきました。



牧野富太郎博士は1862年5月22日(文久2年4月24日)生まれで、多数の新種を発見し命名も行った近代植物分類学の権威で「日本の植物学の父」と言われ1957年1月18日(94歳)に亡くなった偉大な方です。
小学校4年生の夏に広島市井口町の広島市立井口小学校から神戸市東灘区岡本の神戸市立本山第一小学校に転校した時に、右下の写真の中に出てくる担任の先生から職員室に呼ばれて、


あらためて基準クマガイソウの変化を紹介します。
2020年4月10日

2020年4月22日 12日目

2020年4月30日 20日目

2020年5月03日 23日目

2014年5月03日 6年前

上の5枚の写真からタイトルの「熊谷草の花の見ごろはいつ?」の答えは下の枠内の通りです。ただし関東の某所に限ってのことです。上の5枚の写真の縮小版を水平に並べてみました。写真をクリックすると拡大写真を表示します。
① その年によって少なくとも10日の差があることがある。'20年4月10日 '20年4月22日 '20年4月30日 '20年5月03日 '14年5月03日
② 2020年に限って言えば4月15日頃~4月28日頃
③ 2014年に限って言えば5月03日前後(見ごろ期間:計2週間程度)




