


2016年12月中頃から2017年3月23日まで東京電力の房総線で送電線の取替工事が行われていました。この間の工事は24号鉄塔から32号鉄塔の4.1㎞の送電線でした。すでに2017年3月11日に掲載した記事で送電線の取替工事は沢山の手順があることを紹介しましたが、上の写真は⑭の4導体用スペーサーを取り付けているところです。着色番号(① or ①)はすでに過去記事で紹介した作業です。YouTube登録動画はこちらです。→ポチッ

① スパイラルロッドの取外し
② 4導体用スペーサーの取外し
③ ジャンパ線取外し & 碍子の取替
④ 滑車の取付
⑤ 2本送電線の連続化

⑦ 4本の送電線の内2本の新旧交換
⑧ 2本送電線の連続化 ⑤と同じ
⑨ 滑車への送電線かけ換え ⑥と同じ
⑩ 4本の送電線の内2本の新旧交換
⑪ 吊り下げ金具の取外し

⑬ 滑車の取外し
⑭ 4導体用スペーサーの取付
⑮ スパイラルロッドの取付
⑯ 点検(スパイラルロッドとスペーサー)
⑰ ジャンパ線の設置(プレハブジャンパ)

このように4本で構成された送電線を4導体送電線と呼ぶそうです。電圧が高くなるほどコロナ放電防止などの観点から導体数を増やします。スプリングは人間の作業に影響されずに一定の力でケーブルを拘束するためのものです。

こちらが交換前の古いスペーサーです。錆が出てはいますが、同じものだと思われます。この古いスペーサーが房総線の建設当初(1966年)のままであれば、51年前のスペーサーということになります。1966年ならば、日本初の500KV設計となることから、今と同じスペーサが使われていたとも考えにくいので、途中で交換された可能性もあります。スパイラルロットはすでに外された状態でした。

スペーサーを取り付けているところを拡大いたしました。この作業が地上60m~90mで行われていました。ぶら下げている網は取り付けている時の金具の落下防止です。工具に関しては全て紐でつながれていると思います。人が乗っている器具は宙乗器と言うです。



今回の房総線は50万ボルト(500KV)の超高圧送電線のため4本(4導体)の送電線ですが、参考に近くの2導体送電線の写真を下に紹介します。水平に2本並べられていることが分かってもらえると思います。右下の小さい写真は6導体送電線と8導体送電線です。

2導体送電線 154~187KV送電線 200~275KV送電線
3導体送電線 海外 300KV送電線 400KV送電線

6導体送電線 実験線 500KV低インダクタンス送電線想定
8導体送電線 実験線 1000KV送電線想定

スペーサーを取り付けている動画を紹介します。
送電線を移動している動画も紹介します。腕力だけで移動していることが分かってもらえると思います。こちらの動画は動きが大きいので是非ともプレーボタン( ► )クリックして見てもらいたいです。
こちらの動画では落下防止の網をぶら下げていません。こちらはスペーサーとスパイラルロッドを取り付けたあとの作業です。取り付けた状態の確認と修正を行っているものと思われました。日本人の丁寧な仕事の仕方が伝わってきました。
この写真は6本の送電線の最後のスペーサーを取り付ける作業です。この写真で左側の一番下が最後のスペーサーの取付作業中ではありますが、同時に3本の送電線に作業員がぶら下っています。これは仮止に取り付けられた上の2本の送電線のスペーサーと縦に一直線になるようにしているのです。

別の角度から撮った写真です。作業員は3人のように見えますが、実は4人1組でした。1人は地上で錘の付いた糸をぶら下げて連絡をとりながら、スペーサーが縦一直線になるように指示をしている人でした。こちらの作業からも日本人の丁寧な仕事の仕方が感じられました。

全ての送電線の取替工事が完了した送電線です。スペーサーの位置が分かりやすい角度で撮った写真です。3つスペーサーが垂直にきれいに並んでいることが分かってもらえると思います。クリックすると拡大するのでわかりやすいと思います。今回の工事部分(9基の鉄塔)の地図はこちらです。→ポチッ

言葉の説明
1.コロナ放電
空気は絶縁体ですが、送電電圧が非常に高くなると、送電線の周囲の空気の絶縁が部分的に破れ、わずかずつ放電を始めます。これがコロナ放電です。送電線の場合は、電線を太くしたり、電線を4本・8本などに分けたりして、コロナを出しにくくしています。コロナ放電は空気中だけでなく、油、ゴム、プラスチック材料などの絶縁物の中でも起こります。